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A. 一見そうですが、実は、化学組成が同じでも、水と水蒸気では物性はまったく異なります。これが不思議な点です。
A. まず、水にはその中心に集まろうとする力があります(凝集力)。表面積をできるだけ小さくしようと働くので、この力を表面張力と呼んでいます。そのため、水を無重力空間に浮かべると、形が真球状になります。この現象は水だけではなく、液体すべてに共通しますが、水では特にその力が大きいのです,一方、地上で水滴を物体表面に戴せると、重力のほか、物体表面が水を引き寄せようとする力(付着力)の影響を受けることになります。
A. 物体の表面では、その分子のもつ力によって、近接する水の分子を引き寄せようとしています。力の強さは表面の物理的・化学的構造によって異なりますが、この力が十分に大きければ、水の凝集力に打ち勝って、水は広がって表面が濡れます。逆に、物体表面の引力が弱いと、水は凝集力で丸まって水滴になり、いわば水が撥かれた状態になります。図中の接触角は濡れにくさの度合を示すもので、90°を超えると強い撥水性があることになります。シリコーン膜は、もともと引力の小さいメチル基が表面に並んでいるので撥水性を示します。ジメチルシリコーンオイルで処理したガラス板では、水に対する接触角は約103°です。
A. 水蒸気の場合は、水滴とは逆に周囲へ広がろうとします。この拡散力が透湿性の原動力です。
A. 水蒸気に限らず、気体が皮膜を通りやすいかどうか(気体透過係数)は、皮膜中への気体の浸入しやすさ(溶解度係数)と皮膜中での気体分子の拡散しやすさ(拡敵係数)によって決まります。皮膜中では、当然自由空間に比べると気体の働きは制限されますが、その程度は皮膜を構成している物質により異なります。シリコーン皮膜中では、他の合成ゴムやプラスチックの皮膜に比べて、桁違いに気体の拡散係数が大きいのです。シリコーンは一般に、隙間の多い分子構造のため、極めて高い透湿性を示すと考えられます。同様に水蒸気では、特に溶解度係数が大きいためと考えられます。
A. 例えば、弾性コーティング材トスコートは、建築物外壁への水の浸入を防ぐのが役目です。壁内部の水分は、閉じ込められずに水蒸気として放出されるので、塗膜ふくれを防ぎます。また、絆創膏の粘着剤に応用すれば、防水のほか、皮膚の汗蒸れを防ぐ効果があります。
A. 他の気体でも透過係数は大きいですが、気体の種類によりその程度に差があります。弊社ではシリコーン膜の酸素と窒素の透過添数の差を利用して、空気中の酸素比率を高めています(酸素富化)。その一例として、酸素吸入器や高効率燃焼炉用の酸素富化装置などがあります。
A. 油は表面張力(凝集力)が水の約1/3と小さいので、通常のシリコーンの表面では付着カの方が強くなり、油は広がってしまいます。つまり、撥油性は十分ではありません。
良好な撥油性を得るため、フッ素原子を利用して、付着力が低いシリコーンを作ります。特にシリコーンにトリフルオロメチル基(メチル基CH3‐の水素をすべてフッ素で置換したCF3‐)を持つ原子があれば、付着力が大幅に低くなります。このような化学構造をもつフルオロアルキルシラン類が市販されていますが、このシランで処理すると、物体表面に撥水性はもちろん、撥油性も付加され、優れた防汚性を発揮します。
A. 「何にでも」というのは少しオーバーですが、確かにシリコーンにより製品設計の自由度が大幅に高まります。シリコーンを採用して、製品本来の性質を改善し、多数の製品が開発され、市販されています。他の物質への低い付着力に由来する撥水性を付加した製品だけでも、離型用シリコーンや、剥離紙用シリコーン、普通紙コピー機の熱定着ロール紙用シリコーンゴムなど、多種多様な用途で数多くの製品があります。
*The marks followed by an asterisk (*) are trademarks of Momentive Performance Materials Inc.